僕の好きな曲の一つに Der Hirt auf dem Felsen (岩の上の牧人)という歌がある。 この曲はミューラー(Wilhelm Müller)の詩に曲を付けたものであるが、シューベルトの歌曲の中でも異色の作品である。 何が異色かと言えば、先ず演奏時間が12分を超える長大さである。これはリート(Lied)と呼ぶより「演奏会用アリア」と言った方がよいのではないかと思う。 それともう一つ異色な点は、ピアノのほかにクラリネットが加わっていることである。歌曲でピアノ以外の楽器が入ることはシューベルトの時代には珍しい。(後の時代=マーラーやリヒャルト・シュトラウスになるとオーケストラ伴奏のものがあるが、) そしてこのクラリネットは、伴奏というより歌のパートとして扱われていて、人声との「二重唱」の趣がある。
僕がこの曲を初めて耳にしたのは20歳前後のころで、そのとき非常に印象深く思ったのであるが、以来演奏会でも放送でも聴く機会がなく今まで来てしまった。 それが、たまたま先日BBCの放送聴いていたらこの曲が流れてきて、俄かに昔の思い出が蘇ったのである。 もう一度聴き返してみたくなり、YouTube で探してみたら、幸運にも1件だけ見つかった。歌っているのはオランダの名ソプラノ、エリー・アメリンクである。 https://www.youtube.com/watch?v=rPpII4xTVrc この画像には曲の進行に従って楽譜が表示されるので、歌曲ファンにはありがたいことである。 |