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2016年04月05日(火) 
先月には著名なドイツ人政治家の逝去が続いた。

一人はFDP(自由民主党)の元党首で、前政権では連立のパートナーとして外務大臣を務めたギド・ヴェスタヴェレ。54歳だった。

在任中に同性愛婚をし、その相手を外国公式訪問に伴うなどして反感を買い、さらに外務大臣という高位に舞い上がった言動を繰り返す一方で、2009年の連邦選挙前の約束は何一つ実行せず、その報いで2013年の選挙で党支持率が5%に満たなかったため、党そのものが連邦議会での議席を失った。

2、3年前に白血病を患っているとの報道があり、長くはないと予想されていたが、果たしてその通りになった。

ケルン大聖堂での葬儀では頬を流れる涙を拭おうともしない「配偶者」もアップで写され、アンゲラ・メルケルにとっては連立の相手だったばかりでなく個人的にも交友関係のあった間柄なので、えらく思い入れのある弔辞を読んだ。

私の夫が以前、政治家連中は政敵がボロクソにいうほど悪い人間ではないにしても、その弔辞で称えられるほどの善人でもない、といっていたのを思い出した。

続いて三月末に亡くなったのは、ハンス=ディートリッヒ・ゲンシャー元外相で、その数日前に89歳になったばかりだった。この人はドイツのみならず欧州全体で、東西ドイツ再統一の立役者として知られる。

上記ヴェスタヴェレと同じくFDPに属し、コール連立政権で長く外務大臣を務めた。その職務上、数年間にわたって旧東独政府とはもちろん、ソ連、アメリカ、さらには口出し大好きのフランスとの折衝に明け暮れ、ついに統一にこぎつけた。

まあ偉いといえば偉いのだろうが、あの時期どの政治家も、ドイツ再統一における自分の存在意義をアピールしようと必死だったから、当時野党だったSPD(社会民主党)などは出番がなくてずいぶん悔しい思いをしただろう。

例によって、死後に彼を英雄視する評が相次ぎ、「統一の父」として国葬をという声が出ている。

国葬の話で古いことを思い出した。

私が大学4年生の時の年末、わが家の台所・居間が修理中で自宅では何かと不自由だったため、父母がその時期に京都・奈良を回ろうといい出し、私は東京から帰省する途中で両親に合流した。

その旅行で父にとってのハイライトは落柿舎だったが、その茅屋よりもそこにある俳人向井去来の墓が見たいのだという。

行ってみると、本当に小さい目立たぬ墓で、そのことに私も感動を覚えずにはいられなかった。

それで私は父に言った。

「今年亡くなったインドネシアのスカルノ元大統領の家族は、国葬にしてくれと政府にゴネたそうだけど、秋に亡くなったドゴール元大統領は、国葬にはしないようにという遺言を残してたんですってね。さすが、成り上がり者とは人間の格が違うと思ったけど、でも一番偉いのはこういう墓を望んだ人だと思うわ。」

スカルノ元大統領の葬儀がどうなったかは記憶にないが、ドゴール氏の方はその遺言にもかかわらず国葬になった。威風堂々・豪華絢爛大好きの欧州では、慎ましい葬儀など失礼と思われたのかもしれないが、故人の意志を無視する方がよほど失礼だと私は思う。

ところで私がびっくりしたのは、ニュースで報道されたヴェスタヴェレ元外相の葬儀で、メルケルに続いてヴェロニカ・フェレスという女優が「別れの言葉」を述べたことだった。

この女優は最近正式に結婚したが、長く富豪のマシュマイヤーという事業家の愛人で、カップルはよく(ど)派手なパーティを催して政界・経済界・芸能界の著名人を招いていた。

喫茶店で読む週刊誌にその様子がしばしば掲載されるので、招待客の面々については私も知っていたが、例えば、分かれた妻への慰謝料でスカンピンになり、大金持ちからの低利子借金で新妻とのマイホームを建てたのが原因で大統領職を辞することになったクリスチアン・ウルフとその妻も常連。そしてその仲間にヴェスタヴェレ氏もいた。

マシュマイヤー氏はかなり「あこぎな」商売人として、法の網をくぐってぎりぎり合法のことをやって富を築いた人物で、「たかりやウルフ」が彼の友人であることは驚くにはあたらなかったが、他にも、ええっ、この人までが?と思うくらい交友範囲が広かった。政治家たちも、おそらく共産党員以外は全部招きに応じていたらしい。

それでそれらのパーティでホステスを務めたヴェロニカが、親密度と知名度からヴェスタヴェレのために弔辞を買ってでたのであろうが、大聖堂でマイクの前にこの女性が現れたときにはぎょっとした。

その彼女が別れの言葉を述べ始めたときには、もっとびっくりした。

彼女は新約聖書の「ロマ書」の中の言葉を引用して言った。

「パウロはローマの信徒たちに宛てた手紙でこう言っています。『我らのうち己のために生ける者なく、己のために死ぬる者なし(文語訳)』」

いや、確かにそう書かれているのだけど、パウロ及びローマで宣教しているその弟子たちと、この女優ヴェロニカとの間に横たわる深淵を思うと、引用された聖書の言葉をどう受け止めればいいのかと、一瞬頭がくらくらしてしまった。

しかしこのことで私はロマ書を何十年ぶりかに読む気になって、文語訳の聖書を取りだしたのだった。(口語訳は日本語として美しくない上に、禁止用語などを考慮してかしょっちゅう言葉を変えるので、私は嫌いである。)

そして、これまで記憶になかった素晴らしい箇所に出くわした。

「汝等、たがいに愛を負ふのほか何をも人に負ふな。」

その前にこうある。

「汝等その負債(おひめ)をおのおのに償へ、貢を受くべき者に貢をおさめ、税を受くべき者に税をおさめ、畏るべき者をおそれ、尊ぶべき者をたふとべ。」

これらの言葉から、自分にとっての恩人のことを思い、そのあとで、世界中で増えている脱税者(税を受くべき者に税を納めていない人々)についても考えたのだが・・・

今日、朝食を終えてPCを開き、いつものように主要な新聞のニュースの見出しを繰ると、どの新聞でも最初にPanama Papers(パナマ文書)という言葉が躍っている。

何のことかと思ったら、タックスヘイブンのパナマで、そこの「モサック・フォンセンカ」という法律事務所のクライアントとして過去40年間にわたり巨万の富を運用してきた企業・富豪(一般市民さえも)の名を暴露するデータが、法律事務所の内部者によって南ドイツ新聞(Sueddeutsche Zeitung)に渡されたという話。

文書には1150万件、2.6テラバイト(って言われても想像できない)のデータが含まれ、それらクライアントの中にはプーチンやサウジアラビア国王、アイスランド首相、アルゼンチン大統領のほか、キャメロン首相の父親(故人)の名前まであるとか。

ところが日本の新聞を見てみると、パナマ文書に関する報道は一切見当たらない。これ、どういうこと?

日本はパナマ文書とは無関係なのだろうか、と思ったら、なんとなんと。

日本の上場企業トップ50社のうち45社がパナマで資産管理をさせているんだって。その総額は55兆円で、アメリカに次ぎ第二番目の額だって。

日本のマスコミの沈黙はどういうわけか。それはいったい何を意味するのだろうか。

政治家の葬儀の話から飛んだ方向に話が進んでしまったが。

(写真は向井去来の墓です。)

閲覧数957 カテゴリ日記 コメント24 投稿日時2016/04/05 00:40
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