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2016年04月12日(火) 
毎年4月には、夫の業界の集まりがオーストリアである。何せ小国だからこの国単独では参加者が限られるため、ドイツ人の参加をいつも呼びかけており、オーストリアの方が景色もきれいで楽しく、すべてにわたって「エレガント」なので、ドイツ業界単独のイベントはパスしてもこちらに来るドイツ人が多い。

わが亭主もその一人で、春のオーストリアに旅する口実があるのを喜んでいる。

ただ、今年は昨年・一昨年より10日-2週間早くて肌寒い上に、天気には恵まれなかった。

オーストリアでも東部だと車ではちょっと遠すぎて航空機になるが、恒例の集まりはなぜか(ドイツ人の便宜を図ってであろうが)ドイツ国境からあまり遠くないところで催される。

今年は一昨年に続いてバート・イシュルという温泉町が開催地だった。ドイツ国境から5キロしか離れていないザルツブルクから東へ30キロほどの地である。

温泉町ったって、日本の草津や熱海を想像してはいかん。まず、裸で入る温泉はない。ミネラル成分に富む鉱泉で知られるので、昔は特に関節や皮膚の病気を持つ裕福な人が出かけ、その水を飲むための施設があった。

今もそれは残っていて、昼間の講演会に続く夕食会の場所はその施設だった。名称をトリンクハレ(ドリンク・ホール)という。

湧き出る水は地熱で暖かいので、風呂ではなくプールがある。

私たちが泊まったホテルの隣は大きな温水プールで、サウナやジャグジーその他の付帯設備もあり、ホテルから渡り廊下を通ってバスローブ姿で行き来できるようになっているが、私は誰かと一緒に入浴するのはもちろん、人前で水着になるのもいやなので、猫に小判だった。

さて、私もこの種のイベントにはかなり顔を出しており、夫の出張で同業者を訪ねることもあるので、いまやかなりの顔見知りがいる。亭主の年齢を反映してジイサンが多いが50歳前後の社長やエンジニアも混じっている。

○○○協会の元会長とか理事、大学の名誉教授などもいる。そういう方々は昔かたぎで、挨拶の時に私の手を取って手の甲にチュッとしたり。うンまあ、いまどき。でもオーストリアという国ではそれが時代錯誤でもない。

さて金曜日の正午をもって全プログラムが終わり、私たち夫婦は、ウィーン近辺の企業主およびその若い社員と、ドイツで夫が親しくしているコンサルタントをお茶に誘った。

オーストリアは「お菓子の国」なので、ドイツ人の方はクレープやチョコレートケーキなどを注文したが、お菓子に食べ飽きているオーストリア人は軽食にした。

今の時勢から話題は難民問題・ユーロ危機・パナマ文書等の欧州の国際問題が主で、ドイツ人の方は難民に関し確固たる方針を貫いているオーストリア政府をうらやむことしきり。

彼らはメルケルの命令と国民の要求の間で右往左往するドイツ内務大臣とは大違いだと、オーストリアのミクル=ライトナー内相を盛んに褒めたが、社長のN氏はやや懐疑的だった。

果たしてその翌日、ミクル=ライトナー女史が内務大臣の職を辞し、ニーダーエスターライヒ(下オーストリア)州の知事代理になるということが発表された。

ニーダーエスターライヒはウィーンを囲む州で、ウィーン特別市を含む9つの州の中では面積・人口ともに最大である。

現知事が70歳近いので、いずれ彼女がその後継者になるらしい。

とはいえ、内務大臣なら国政だから地位としてはこちらが上だと思うが、役職としては州知事の方が「断然楽しくて面白い」のだそうだ。

難民問題で苦労し、さんざん奮闘して、今やその業績が高い評価を得たので、「やるべきことはやった、これからはもう少し楽な仕事を」ということなのだろうか。

そのあたりのことは、さすがにN氏はくだんのニーダーエスターライヒ州の住民だけあって、事情を掌握していたようだ。

一方で外務大臣クルツ氏の評価では、全員が二重丸だった。

私は知っていたが、夫はN氏から初めて「彼は貴族や富豪の息子ではなく、普通の家庭の出身だからね」と聞いて、感嘆おくあたわずという風。

今ギリシアのイドメニには1万1千人の自称難民が泥キャンプを張っており、何としてもドイツに行くと言ってあきらめない。国境警備隊との衝突で数百名の怪我人が出たとか。

「難民」が掲げているプラカードを見ると、英語で「国境を廃せ」「すべての人間は法に適っている」「世の中に不法な人間などいない」と書いている。

彼らにこんなことが書けるとは思えないので、「活動家」と呼ばれる人々が手を貸し、撤退を拒むようけしかけていることは明白である。

聞けばしょっちゅうビラが配られ、それらは英語かドイツ語でかかれているそうだ。過日、国境のそばの川で溺死する人達が出たのも、活動家のビラと直接の扇動が原因だった。

イドメニの惨状を放ってはおけない、彼らをドイツに連れてくるべきだと、緑の党の、それも左派グループが主張しているが、そんなことをしたらたちまち数万人、数十万人が新たにマケドニア国境に押しかける。

「活動家」の資金源の一部は、この緑の党の左派からであろう。

いわゆるバルカンルートが閉鎖されて、運び屋たちがより危険で時間のかかるルートを開拓しているが、その中でイタリア東北部からブレンナー峠を超えてオーストリアのチロル州(州都インスブルック)に入るルートが第一候補となっている。

そのためオーストリアは最近、ブレンナー峠に国境警護の部隊を派遣し始めた。

理想物語やユートピアに狂う緑の党員は別として、一般のドイツ人はオーストリアに「しっかりやってくれよ」とエールを送っている。

メルケルはトルコよりオーストリアに財政援助をすべきだと思う。(オーストリアは多分、マケドニアの国境警備強化を財政的に支援しているであろう。)

最近、イスラム教徒を嫌うポーランドがイラク人キリスト教徒を何十人か受けいれたところ、彼らはあっという間に国境を越えてドイツに行ってしまった。

その理由は、ポーランドで最初にもらえる小遣いが断然少なく、また今後の生活保障費も、彼らが運び屋に払うために借りた金を返済するには足りないからだという。

ベルリンの緑の党の言う通りにしていたら、ドイツ人は自分たちが丸裸にまるまで中東・北アフリカの人々を助けねばならない。このことに多くの国民が恐怖を募らせているのは当然だ。

もっとも三月の選挙に勝ったわが州の緑の党右派も、左派の同僚の言動には閉口している。

しかし。

問題は難民だけではない。ギリシアの支払い不能問題がまたまた浮上し、IMFのラガルド女史がドイツなど債権国に借金の帳消しを迫って、これまた国民を怒らせている。

バート・イシュルへの途中で寄ったドライブインで、雑誌シュピーゲルをめくっていたら、面白い記事があった。

あるギリシアの公務員が、過去6年間1度も職場に行かず、それなのに毎月きちんと給料をもらっていて、そのことに誰も気づかなかったというのである。

お茶の席で私がその話をすると、ドイツ人のコンサルタントの爺さんが「そんなの全然驚く話じゃないよ、死んだ公務員に十年近く給料払ってたケースもあるから」という。

すると我が亭主が「ギリシアじゃ年金を相続できるから、死亡を隠す必要はないのにね。単に死亡報告が面倒くさかっただけだろう。」

年金を相続できるってどういうこと?何のため?と私が訊くと、「そりゃ、子供が働かずに暮らせるようにという親心さ」なんて、こっちの頭が変になりそう。

一人っ子の場合は全部もらえるだろうけど、兄弟姉妹があれば分割するの?

だろうね、その場合は生活費としては不十分だから、ちょっとは働かなくちゃいけなくてみんな腹立たしいだろうね。

その子供の子供も、年金を相続できるの?

どうだろう、孫にも年金を相続させるという話は聞いていないが、いずれそれも可能になるかもな。ドイツの金で。

私もう、欧州の政治の話はしばらく聞きたくない!!!

写真1.ホテルの横の温水プール施設
写真2.会議場
写真3.鉱泉を飲むトリンクハレ

閲覧数760 カテゴリ日記 コメント12 投稿日時2016/04/12 19:11
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コメント(12)
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  • 2016/04/13 06:09
    鉛筆ベッガさん
    > かーりーさん
    今SPDの人気が急落していて、CDUもだいぶ衰えている。緑の党がここ数週間好調なのは、バーデンヴュルテンべルク州の知事クレッチマンの大人気のおかげで、ベルリンの党首たちはこの右派の田舎者爺さんの人気を複雑な気持ちで見ているようです。

    で、国民が何もかもに腹を立てている理由ですが、難民殺到で新たな120~130万人を養うために増税と年金カットがあるのではないかと心配していたら、財務省が昨年度の歳入は歳出を大幅に上回り黒字と発表。政府は得意げに、従って増税も年金削減も不要と発表しました。

    ところがこれが大部分の国民を怒らせたのです。そんな余裕があるのに、どうして俺たちは19%の消費税を払って、フランスより低い年金で我慢しなきゃならないんだ。増税がなくても100万人を優に超える難民を養えるほど国庫が豊かなら、なぜ俺たちの年金を増やさないのだ、なぜ所得税の減税を行わないのだ!という怒りです。

    騙されていると国民が感じるのももっともでしょう。

    オーストリアは確かに優美さと上品さを愛する国民で、衣・食・住全般にわたりセンスはいいですが、国土・人口が似るスイスと比較すると大変面白い。

    科学や学問・技術の世界では、オーストリアはドイツ/スイスにだいぶ水をあけられているんですよ。大学も、チューリッヒやザンクトガレンがドイツ語圏では最高レベルなのに対し、インスブルックやグラーツで得た博士号はバカにされる。

    それとオーストリア人の方が享楽的で、格好つけて、無い袖を振りたがる。

    瑞・墺の違いを一番感じるのは新聞です。スイスではオーストリアの新聞を売っていなくて読めない。はっきり言って読む価値もあまりない。

    ところが、オーストリアでは、ドイツ語圏の新聞としては最古で老舗の新チューリッヒ新聞(NZZ)をキオスクで買えるんです。

    一方で、このことは、スイスの新聞の優位を認める大らかさがオーストリア人にある証拠とも言えます。
    次項有
  • 2016/04/12 22:07
     私たちは、何事も「常識」で判断するしかないのですが、いろんな分野で、その「常識」が通用しなくなっているような気がします。経済や政治も同じ。戸惑うことばかりで、それが高じると、判断停止に追い込まれかねませんね。
    次項有
  • 2016/04/12 23:11
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん
    こちらに来て戸惑うことがあまりに多いので、自分の受けた教育や躾け、そこから得た人生観はどういう意味を持つのかと、考え込んでしまいます。

    ギリシアもですが、フランスやイタリアなどでも、働くということは卑しいこと、あるいは何かの罰だという考え方があって、真面目ということも嘲笑の対象になる。

    恐ろしいことに、ドイツ人すらそういう見方の方がモダンで新しいという妄想に取りつかれています。数年前に65歳定年が63歳に引き下げられたのですが、そのとき、女性の労働大臣が「働かねばならないということは屈辱で、人間の威厳を損なうから、早く仕事をやめるのが望ましい」と堂々と言ったので、ドイツ人もここまで来たのかと驚愕しました。

    人としての威厳、というものも、国により、個人によって、全く異なる定義・解釈になるのですね。そういう中で、信念を曲げずにいることはまさに大試練です。
    次項有
  • 2016/04/13 09:33
    > ベッガさん

     「へぇ~、そうなんだ」。私の「常識」が全く通じない。ベッガさんのEUリポートは驚くことばかりです。でも、その分、とても新鮮です。

    > 65歳定年が63歳に引き下げられた

     さすがドイツですね。ドイツで出来ることが日本に出来ないはずがありません。安倍さん、がんばれ!^^
     とはいえ、女性の労働大臣の発言はいただけません。私は、仕事をしたいです。;^^
    次項有
  • 2016/04/13 15:49
    鉛筆ベッガさん
    > 南総の寅次郎さん
    ということは、定年を引き下げることに賛成?日本は60歳だけど、それを63歳に引き上げることに賛成?

    相手がドイツでもその他の国でも、日本がその方式に習おうとすると、その前提を変えねばならなくなり、そのため「ことはそう簡単ではない」ということになります。

    ドイツ人はある世代から63歳で退職できるようになりましたが、65歳まで働くことも可能です。その場合は年金が若干増えます。逆に言うと、63歳で退職した人の年金は低めです。

    ドイツでは、正当でない理由で首になり、裁判に持ち込んだ場合を除き、退職金はありません。

    それから、この点が重要なんですが、ドイツでは大学を卒業するのに5年かかります(高校が日本より長く、大学入学が若干遅いので、教養課程はなくすぐに専門課程に入ります。したがって5年学べば、いわゆる学士でなく修士の資格が得られます)。

    さらに、何年大学にいても無料なので、たいていの人は6、7年学生でいます。ということは、社会人になるのが日本人よりずっと遅く、25歳ならば早いほう。

    つまり働く年数は日本より少ないくらいなので、年金をかける年数も短い。そこへ2年削られると、ちょっと厳しくなります。もっとも、額が大きいので多少削られてもさほどダメージはありませんが。

    ただし、これは大卒のサラリーマンや公務員の場合で、もう一つさらに重要な点は、いわゆる職人さん、工員、中小企業の従業員、自営業者、女性などは、大卒者よりも6,7年長く働いて、しかも年金は彼らの半分以下ということです。

    彼・彼女たちの年金は日本とほとんど変わりません。

    今ドイツでは政権大連立のパートナーであるSPD(社会民主党)の人気がガタ落ちです。

    この党は上記の女性労働大臣の「活躍」で、定年を引き下げ、法定最低賃金を8.5ユーロに設定しました。これからそれを10ユーロまで上げようとしています。党は、その業績を誇っていますが、人気は落ちる一方。

    なぜだかお分かりですか。SPDのやっていることは、労働組合に属する大企業の従業員と、これまた強力な組合を有する公務員とを益するのみなのです。これらの組合員が、SPDの票田ですから。

    つまり、国民のほとんどの就労者は、定年引き下げの恩恵には全くあずかれないのです。

    最低賃金の設定はSPDの「功績」に見えますが、これにより、ガソリンスタンドで働く人々や小売店・喫茶店の女性は、今までの8時間労働にかえて6時間とされ、収入は全く増えていません。

    6時間に削って足りない2時間分は、喫茶店主や小売店のおかみさんが自ら働いて補います。そうでもしないと、彼らも商売を維持できませんから。

    SPDの看板は「働く人たちの党」ですが、この党が守っているのは、守られる必要がほとんどない恵まれた勤労者のみです。

    ドイツにできて日本にできない理由は山ほどあります。また、日本が真似てはいけない側面も非常に多いですが、これはマスコミでは全く報道されておらず、日本人も難民のようにドイツを理想の国と思っているようです。
    次項有
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