31番線ホームの先の方に行ってみます。
先ほど暖機中の機関車たちを上から俯瞰した物置小屋の屋上に上がります。梯子なんかではなく、ちゃんとした鋼板製の階段で上がれるようになっています。前にちょっと述べたかと思うのですが、屋上の手すりにハルツを走る車両の型式図(かたしきず)が幾つか展示されていますので、その一部を紹介したいと思います。
型式と言っても、ドイツのナローゲージの蒸気機関車は全てが雑型と一括されて型式「99」にまとめられているので、ハルツの蒸気機関車も全て型式は「99」となっています。
これでは型式で区別することができないので、数の多い車両はその後ろの車両番号によって区別しています。仕様が同じ機関車が多い場合には代表番号を決めて区別してあり、数量が少ない車両は1両ごとの番号で管理しています。
まず、この鉄道の主役、我が国の機関車で言うと国鉄時代の大型タンクロコ・E10によく似ていて、ほんの少し小さくしたような5動軸機関車です。
参考までに、わが国鉄のE10型機関車の写真です。
最初の型式図はBR 99.723-724 です。
BRとは、ハルツ狭軌鉄道が付けた記号で、ハルツのすべての蒸気機関車に付されます。99はドイツ基準によりナローゲージ蒸気機関車につけられる型式です。そしてドットに続く723と724は4桁の車両番号の上3桁で、7230番代と7240番代という意味です。すなわち7230号車から7249号車という意味になります。
もう1枚の型式図があります。
この型式図にはBR 99 7222 と1両だけの車両番号が記されています。これはこの仕様の機関車が1両だけ存在しているのでこの1両だけの型式図です。
7237号と7239号、上に記したBR 99 723・・に属します。
7232号、斜め後ろからの姿です。
そして、7239号は真横からの姿を撮影することができました。
同じ仕様の724・・に属する7240号。
次の型式図は珍しい複式機関車です。
複式機関車(マレー型)とは型式図の足回りを見れば分かりますが、片側に2基ずつ(左右両側で4基)のメイン・シリンダーを設けた機関車です。蒸気機関車はメイン・シリンダーと動軸とが(真上から見て)一直線上(厳密にいうと平行2直線)に並んでいないといけないので、動軸数が多くなると急カーブを曲がり難く、それを避けるために動軸を前後に2分割し後ろ側の部分を機関車の台枠に固定し、前方の動軸群をボギー車の台車のように左右に回転できるようにして、カーブへの追随性を良くした構造です。
そして、動力発生装置であるシリンダーも駆動される動輪と一直線上に無くてはいけないので動輪群と同様2個(片側で)必要になります。
マレー型型機関車の99-5902号。
残念ながら正面の顔写真がうまく撮れませんでしたが、側面は何とか写すことができました。
1年後の2018年に訪れた時にもこの機関車が元気に活躍している姿を見ることができました。
せっかくのチャンスです。前回あまりきれいに写せなかった側面の足回りを大きく写しました。
メインシリンダーが前後に2つあるのがわかるかと思います(カバーが付けられているのでシリンダーの丸い姿が見えませんが黒い箱状に見えるものがメインシリンダーです。
もう1枚マレー型機関車の型式図が有りました。機関車の全長が50センチほど長い気持ち大きな機関車です。5902号より20年ほど遅く(1918年)登場した機関車です。
ハルツ狭軌鉄道の南半分を見に行った時のことです。
ハルツ最南端の駅ノルトハウゼン・ノルトから出る1日1本のSL列車ブロッケン行きに乗車、東方面に向かう路線との分岐駅アイスフェルダータールミューレで下車します。
ここから南方面に戻る列車を待つ間に北から列車がやって来ました。ここ、アイスフェルダータールミューレ終着の列車です。
機関車が列車の反対側に移動するために切り離されました。
ここでマレー式機関車を理解するために都合の良い写真が撮影できました。
ボイラーで発生した高圧の蒸気は、まず後ろ側のシリンダーに入り仕事をし、その後引き続いて前側のシリンダーに送られ再度仕事をします。後ろ側のシリンダーで仕事をしたので蒸気の圧力は下がってしまうので、前側のシリンダーは直径が大きく造られ両方のシリンダーの仕事量の違いが無いように考えられています。
この機関車は1両のみの在籍で99-5906号と附番されています。上に示した99-5902号に比べるといろいろな機器などが積み込まれていて複雑な外観をしています。
この路線で使われている蒸気機関車の大多数は一番最初に挙げた型式図に含まれています。
それ以外にも型式図は展示されていますが実車を見ることは出来ませんでした。
1-C-1型の機関車の型式図が有ったので実車を見たかったです。
5動軸のE型比べると非力なC型機関車、どんな列車に使うのでしょうか。見てみたかったのですが残念でした。
<つづく>