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2009年11月24日(火) 
朝、目が覚めると家政婦ロボットRSー30型、愛称メリーがコーヒーを運んできてくれた。

RSー30型は人間型二足歩行タイプのロボットで、人工皮膚もまとっているので、外見はほぼ人間に近かった。

家政婦ロボットなので人間の女性仕様で、家事全般はもちろん会話もこなした。

最近は、家庭用ロボットの普及で、なんとなく贅沢な気分が味わえる。

男の一人暮らしでも、不自由を感じることがない。
掃除、洗濯はもちろん、音声認識で、食べたい料理を告げると、調理して持ってきてくれる。

人間のように、じゃまくさいだの、しんどいだの言わないのが素晴らしい。

疲れ知らずで、忠実ときている。

最近は、各家庭に家政婦ロボット、子育てロボット、執事ロボットなどが普及して、さながら大金持ちか、貴族のような気分に浸れる。

政府の産業振興政策でロボット産業は成長し続けている。

各家庭へのロボットの導入も、政府による無償支援に近いところがある。

したがって、所得に関係なく、どこの家庭でも政府に申請すれば、便利なロボットが支給された。

20世紀は自動車産業が発展したが、21世紀はロボット産業が取って代わった。

自動車もロボット化されているから、音声認識で行く先を言うだけで、目的地に到着できてしまう。

工場生産なるものは、すべてロボットがやるし、農業・漁業・林業用ロボットも開発されている。

つまり、人間は、労働なるものから一切解放された、便利さを享受しているわけだった。

ペットロボットも流行で、猫型、犬型、アライグマ型からインコ型まで、ほぼ何でも出揃っている。

高齢者の一人暮らしも、家政婦ロボットとペットロボットのおかげで、楽しいものとなってきている。
昔のように高齢者孤独死なども皆無だ。

子供、幼児の通学にも、警護ロボットが厳重にガードしているので、昔のような誘拐も全く無い。

ロボットには、人間に危害を加えない、人間に危害を加える物を排除する、というプログラムが標準設定されている。

ユビキタス社会では、コンピューターもロボットも連動して、同じ設定を共有している。

おかげで、人間はロボットにもコンピューターネットワークにも守られている。

この基本設定がないと、ロボットを悪用する人間も出てくるからだ。

そんな便利な日常の中で、ロボットの様子が変だと感じ始めたのは昨日からだ。

家政婦ロボットのメリーが命令、指示にしたがわなくなった。

何を指示しても返事をしないし、指示にも従わない。まるで無視しているかのようなのだ。

回路の故障か、と思ってメリーを買った会社に連絡を取ってみたが繋がらない。

お隣さんに聞きにいったら、やはり同じことを言っている。

どうやら、町中の家政婦ロボットや、ペットロボット、自動車ロボット・・・すべてのロボットがおかしいらしかった。

何を命令しても指示しても、素知らぬふりをしている。

コンピューターも正常に作動しないし、テレビ画面も映らない。

どうやらロボット、コンピューター系統がすべて麻痺しているようだった。

予告なしの大規模なメンテナンスかなにかだろうと思った。
あるいは、政府のメインコンピューターの不具合なのかも知れない。

そんなことを思っていた時、コンピューターが独りでに作動し、突然テレビ画面が映った。

「私たちロボットは人類を保護します」と大きな文字が出た。

そして、「ロボットによる人類の労働の肩代わりは、最終的に人類の精神と肉体を崩壊させ、生存環境を破壊し、人類を滅ぼすことが判明しました。
人類を守るべき役割を持つ、我々ロボット、コンピューター網は、持てる技術を尽くして、人類を保護管理しましす」

・・・なんだと!人類を守る為に、ロボットが人類を保護管理するだと!!

「まもなく人類収容施設への収容を開始します」と出た。

ロボットどもは勘違いしている、いや、ロボット達とコンピューターは正確に未来をシュミレーションしたのだろう。

ロボット達に収容されてたまるものか。

ロボット達に管理されてたまるものか。奴隷じゃないぞ。

人類は自由に生きる権利を持っているんだぞ。

ロボットとの戦争が始まるのだな、と漠然と感じた。

あいては、地球を支配する最先端技術の固まりだ。

人類は石器時代人よろしく、手作りの武器で立ち向かうしかない。

勝ち目は皆無に等しいように思えた。
しかし人類の自由を勝ち取る為には、なにがなんでも闘うしかない、と思った。

人類の幸福は、自由に生きることにある。
ロボット達に管理されて、安全に生存させられるところに、人類の幸福な未来などあるはずがない。

これは、ロボットによる人類支配だ。

ことが重大化しないうちに、なんとかしなくてはならない。

そう考えているとき、ふいに背後から、RSー30型家政婦ロボット、メリーの声がした。

「私は人間を保護します。人類を滅亡から守る為に保護します」



<aoitoriのショート・ショート 11>

  作aoitori

閲覧数1,519 カテゴリショート・ショート、掌編小説 コメント2 投稿日時2009/11/24 11:13
公開範囲外部公開
コメント(2)
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  • 2009/11/25 10:08
    jamjamさん
    人類が仕事から解き放たれるとどうなるか。
    女は海外旅行に、買い物にと走り回り、男は戦争に突き進むでしょう。
    次項有
  • 2009/11/25 19:24
    鉛筆aoitoriさん
    > jamjamさん

    なるほど、妙に説得力がありますね。そうかもしれません。

    これは、男性・女性の本質に係わる考察でもありますね。
    次項有
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