フランクフルトでいつも泊まるホテルには浴槽付きの部屋が有ります。以前はそんな上等な器具は付いていなかったのですが、先日泊まった時は改良(?)されていて、水温調節できる水栓が付いていました。
その水栓に刻まれた温度は何と、最高38℃でした。
そうでした、欧米人は体温くらいのお湯にしか浸からないのでした。
70年余の見すぎ世すぎ、ふと記憶の水面に浮かぶ人々が居る。なんとも長いタイトルだしカテゴリーも長いが、ほかに表現がみつからない。 特に外国で会ったひとたちにはおそらくもう会うこともないし、実際に再会した例もたった一例で極めて少ない。 そういったひとについて思い出した折に書き留めておくことは何かこれからの自身の人生にも、またひょっとするとひと様にも参考になるかと思う。 今日も今日とて「カジノ法案採択」ニュースを見て南米ウルグアイのホテルマンを思い出した。 田舎街の小さなそのホテルは現存し、当時は"Hotel Salto"現在は四つ星の”Salto Hotel & Casino”と称し当時からあったカジノが前面に出されている。写真で見ると外観は当時からさほど変わっていない小さななりだ。 https://www.google.co.jp/maps/place/Salto+Hotel+%26…6987?hl=ja 出張先現場はアルゼンチンとウルグアイの国境をまたぐダムの上に建設中の発電所。実はたった一週間ほどの出張の滞在なのに2度もホテルを変わった。 最初はアルゼンチン側のコンコルディアという地方都市のホテル、だがそこへ毎朝ウルグアイから迎えに来てくれることになった運転手に申し訳なく、ウルグアイ側のこのホテルに移ったわけだ。 そして二日目位にある事情からまたアルゼンチン側に戻ることにした。翌朝ホテルを引き払う準備をしてバーに行った。そこにそのホテルマンは居た。小さなホテルのレセプションも玄関の片隅にしつらえたバーもひと目で見渡せて彼の担当という訳だ。 ウイスキーを注ぎおわると「どうして?」と当然聞いてくる、答えは用意してある「バニュエラグランデ(浴槽)が無いからさ」、「そんな...」と俄かには腑に落ちない様子。 実はチェックインするにあたり「部屋はシャワー付きのしか用意できない、空けばすぐ替わってもらえる」ということだった。小さな田舎町でほかに宿泊できるところはなかった。「じゃ」ということでその場は済ませていた。別にシャワーだけで結構だから翌日もその日の朝も部屋に空きが出来たか尋ねなかった。 「どこか良くないところがあるのか?日曜日にはカジノが開くぞ」「カジノに着て行くものを持ってない。わけは浴槽だけだ、日本人は清潔で三日も湯に漬からないなんて」「それなら部屋が空き次第連絡するから」と言うが「そんなの確かじゃないしコンコルディアなら明日風呂にはいれる」と言うと彼はとても悲し気な表情で黙り込んだ。 それからしばらく言葉不自由な私の方から色々話しかけて、酒のつまを話題に持って行き「ツナ缶無いの?」がなかなか通じず「これだろ」と出してくるのはオリーブの実ばかり。ツナ缶なぞ見たことないらしい。 そのうち「日本人も蜂の子を食べる?」と彼がいうのが私にはわからず身振り手振りでやっと通じて笑い合い、ウイスキーも3番目あたりを越したところで話題を戻しやっと「しかたないなぁ」とまた悲し気な顔に。どこまでも正直で田舎者らしい彼に嘘をついて心苦しかったが本当の理由はとうとう言わなかった。それは日本人としての名誉を守るためだった。 |