地域のネットワークを支えるのは紛れもなく「人」であり、サイトは人々の情熱や夢を自己実現する「場」である。ただ出会いを誘発し人がつながる機会を提供する機能だけを漫然と運用しているだけでは、活性化した創発の「場」を生み出すことはできない。そこには、「人とシステム」、「地域と世界」、「実社会とネット社会」を巧みに融合させたSNSの設計思想が求められる。 ○「参加・自発・協働」の3つのデザイン 限れた人たちだけで企画を固めてから、地域に参加を呼びかけることは避けなくてはならない。行政が主導する場合はなおさらである。対象となる地域の多様な顔ぶれを揃えてから、それぞれの立場や事情・課題をしっかり聞き取り、じっくり時間をかけて調整しながら具体的な立案に入るという「参加のデザイン」がなければ、SNSの社会的効果は一部に限定的に終わってしまう。 何か事を起こす際には、最終のゴールを関係者に事業計画として明確に提示して理解を求め、事前に設定した目標に向けて役割を分担して進めるという手順を踏むことが多い。しかしこの方法では、総じて与えられた役割が義務化されて、分担した作業以上のことをやろうという意欲や、必要以上にグループを拡大しようという意識は生まれにくい。あえて目標となるゴールを提示しないで、大まかなスケジュールや事業の概要を説明することに止めると、誰もがアイデアを持ち込むことができて企画が広がり個々にやりがいをもたらす効果を生む。「自発のデザイン」と呼ばれるこの方法は、途中参加しても疎外感がないような雰囲気づくりにつながり、協働作業の中で互いの信頼感や連帯感を生みだして、継続意欲の高い活動を育てていくのである。 事業を行う際には、誰でも準備にはできるだけ無駄な時間を使わず効率的に行おうと考えるが、組織的な動員を行って細かな作業分担をはじめると、全体の情報共有が阻害されてグループ内部に縦割り意識が発生し、活動に閉塞感が生まれることが多い。既存組織のネットワークを告知や連携等に活用しつつ、直接ひとりひとりに参画を要請するよう心がけると、組織人ではなく個人としての関与を意識づけることができる。そして、従来の組織の立場やしがらみが薄まり、これまで縁のなかった人々とも素直に前向きに関わることができるようになる。この「協働のデザイン」の下、自らの経験や資源を自発的に提供する雰囲気の中で、互いに支え合う協働の場が醸成されるのである。 ○活かせ、地域のスタープレーヤー ローカルな地盤を持つ地域のソーシャルネットワークだからこそ、そこに暮らすキーパーソンたちの顔やつながりは見えやすく、発掘もしやすい。地域にはハブと呼ばれる人脈の結束点になっている人材や、人や資源を接続するコネクターという役割を担っている人が大勢いる。コミュニティの要として存在する人たちに、早い段階で地域SNSに率先して参画してもらえると、ネットワークの輪はおのずから深まり拡大する。 ハブやコネクターの人脈には、明るく行動的で情報発信力の強い、SNSのようなコミュニケーションツールと非常に相性のよい人材がいる。この人たちは、上質のコンテンツを相当量発信してくれたり、ついつい見逃されてしまいそうな日記に粋なコメントを書き込んだりして、一気にスタープレーヤーとして大活躍してくれる。主宰者は、いち早くこれらの人材を見つけて運営に上手に巻き込み、全体のムードづくりを行うとよい。 最初からたくさんの掲示板を用意すると、利用者のマンパワーが分散してしまい全体の賑わいを創出することが難しい。最初は必要最小限の掲示板だけを設置し、あとは盛り上がりが出てくるのをじっくり待って利用者自身に開設させる。何事も「自分事」としての意識を持ってもらうことが大切で、バグのクレームや追加機能の要求も開発者と利用者が一体となって考えて対応する体制を組み込むと、全体の運営にも効果が大きい。 |