youtube でマルタ・アルゲリッチが演奏している動画を見つけた。 曲目はベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番ほかで、2019年の12月にブダペストの「リスト・フェレンツ音楽院」のホールで収録されたものだから、ごく最近のアルゲリッチの姿である。https://www.youtube.com/watch?v=BF7pmimzjBs 彼女は1941年生まれだから収録時は78歳、さすがに艶やかだった黒髪は灰色に変わり、若いころの美貌は見る影もないが、ピアノを弾く手は歳を全く感じさせないどころか、歳を重ねることで音楽性はますます豊かになっているように思える。素晴らしい! アンコールでは2曲が演奏されたが、バッハとスカラッティというバロック音楽を持ってきたところが心憎い。
僕が持っているCDで、彼女が51歳のときに録音した同じベートーヴェンの協奏曲と聴き比べてみた。 このCDに入っているのはコンセルトヘボウでのライブ録音であるが、感動の度合いは78歳の演奏の方がはるかに大きい。例えば第2楽章は非常にゆっくりしたテンポのラルゴであるが、若いときの演奏はゆっくり過ぎて退屈するほどだ。しかし78歳の演奏ではそんなことは全くなく、とにかく美しいの一語に尽きる。演奏時間を計ってみると、どちらも11分ほどでほぼ同じある。にもかかわらず、一方は「退屈」でもう一方は「美しい」。この違いはどこから来るのだろうか。音楽とは不思議で面白いものだ。 |